COLUMN
青い瞳(ブルーコメッツ)にJ-POPの原点を見た


 1    「青い瞳」はなぜ洋楽に聞こえたのか?
更新日時:
2018/12/18
 
:2008/1/1
 
洋楽っぽい音を作っている方がステイタスが高い。これは黒船来航以来のわれわれ同胞の悲しい性(さが)である。筆者は1950年生まれ。確か広告論に17歳理論(*注)というのがあったが、17歳になる少し前、"青い瞳"(ジャッキー吉川とブルーコメッツ)は大ヒットし、後年グループサウンズの嚆矢として位置づけられる。ちょうど高校受験の直前。音楽の授業中に筆者は隣に座った悪友、K松の
おかげでポップスに目覚める。奥手ではある。だからこそ、そののめり込み方は尋常ではなかった。"DAY TRIPPER"(THE BEATLES)あたりからリアルタイムに聴き始め、自分独自のランキングで〜今で言うマイブーム〜を授業中にK松と交換していたのだが、そのころは日本の歌謡曲と洋楽ポップスとは歴然とした区別があることが衆目の一致するところであった。
 
筆者が名門私立高校受験に失敗し、滑り止め都立高校に合格したかしないかの頃、"青い瞳"(英語盤)は世に出た。
新しい洋楽に聴こえた。橋本淳(作詞)の中学英文法的英語詞のせいだけではない。まず、ドラムソロで始まるイントロ。
ドラムソロで始まるJ-POP(当時は和製
POPS)がそれまで存在していたかどうかはわからない。
 
ドラムソロに続くEm-G-A−Cというコード進行。これはディグリー(カッコ内はAmキーの場合)で表すとTm(Am)-♭V(C)-
W(D)-♭Y(F)となり、"朝日のあたる家"
(Arranged by ARAN PRICE,1964年)
である。ここで当時の洋楽好きの人の感性
に触れる。従来の歌謡曲では聴いたことのない進行だが、最近洋楽のどこかで聴いたことはある。これが肝である。
この進行が2回目には4小節目のC(Y)が
B(X)になる。賢明なる読者ならお察しの通り、Tm(原調Em)に行くためにX(B)に
してあるのだ。
 
Aメロ1〜2小節目、これがまた当時の歌謡曲では聴いたことのないサウンドだった。普通なら(カッコ内はキーAm)Tm(Am)
-Wm(Dm)といくところをTm(Am)-W(D)
としている。これはドリアンモードの曲例で引用される進行であるが、実は歌メロ自体は
普通のマイナーになっている例がほとんどである。このTm−Wの繰り返しは7thをつけると"It's Too Late"(music by Carole King,1971)になるが、なんとIt’s Too Lateの方が5年後というのに驚かされる。A'メロ2小節目、4小節目で井上忠夫がEドリアンの特徴音C♯音をあからさまに歌う。これもインパクトのある音であった。
この曲がその後のJ-POPの礎となったことは間違いない。
 
 
(*) 17歳理論
 ヒトは17歳の時に見聞きしたことがいちばん脳裏に刷り込まれる。例えば40歳の人に訴求したいCMには23年前のヒット曲を使うと良いという理論。
大学の広告論の授業で習ったが、誰が唱えたかは失念した。
 

 2    「青い瞳」の女はどこにいた?
更新日時:
2018/12/18
: 2006/03/14
 
青い瞳(ブルーコメッツ)の歌詞に出てくる女はどこにいたのだろう?現代では女と書くとなんとなく差別用語的ニュアンスが醸し出されるのだが、この場合は"女性"でも"女の人"でもない。やはり"女"がふさわしい。
まず、この曲全体に異国情緒が漂っており、何と言っても「青い瞳」であるから日本の女のわけはない。
日本語盤のA'の部分に出てくるようにやせた女である。スリムで乳房やヒップは小ぶりだが、敏感で卓越したテクニックの持ち主で、男を狂わせるに違いない。それは英語盤のサビの最後、♪Love makes the man a KINGでわかる。作詞の橋本淳は
この部分でわざわざ大文字ばかりのKINGを使い、その前のaを[ei]と発音させている。
それではこの女、どこに住んでいるのか?
アメリカでもイギリスでもなく、北欧であることは明白。
 
 
♪吹きすさぶ北国(日本語盤サビ)である。私にとっては五木寛之の直木賞受賞作品「蒼ざめた馬を見よ」に出てくるオリガや「霧のカレリア」(同じく五木寛之)のアイノという女のイメージがこの曲にオーバーラップする。いずれも少年のようなショートカット・ヘアで女の方から近づいて女の方から去っていく。
 

 3    「青い瞳」で英語を学んだ
更新日時:
2018/12/18
: 2006/01/05
 
中学教科書英語風の"There is a lonesome town〜"で始まる青い瞳の英語盤の発売は1966年2月。私が中学を卒業する直前。この曲が中学で学んだ英文法の数々を裏づけてくれた。
サビのYou make me crazyで使役動詞のV+目的語+形容詞が実践的になり、You are the angelで母音の前の不定冠詞が「」(発音記号のフォントが見つからないのでこれで代用)になることを再確認した。
 
その後のLove makes the man a KINGでは不定冠詞を[ei]と発音しており、これは当時、学校では習わなかったので違和感を覚えたものだった。ところが後年、ネイティヴ・スピーカーによるナレーション録音の仕事に携わることがあり、この[ei]という発音を
実際に聞き、溜飲を下げたものだった。
また、Aメロの I dream a dream of the blue,blue lady〜では動詞のdream+名詞のdreamという洒落た表現を身につけた。
この曲は全体的に和製英作文っぽく、ネイティヴがほんとうにこのように表現するのかという疑問を抱きながらも、ちょうど高校入試前後の私にとっては「学校の勉強にも役立つ」ということがポップスを聴く重要な理由付けだったのである。
 



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